2018年9月18日

ノート:青山杉作像について

昨年の土方久功展で展示した木彫レリーフについて、土方研究の第一人者である清水久夫さんから情報をいただきましたので、抄録で掲載します。

---以下本文---

ギャラリー南製作所所蔵作品「肖像」について
清水 久夫
 
昨年3月26日から4月9日まで、ギャラリー南製作所で開催された「土方久功展:南の島の光と風と夢」に一つの木彫レリーフが展示された。男の横顔が描かれた作品であるが、描かれた人物は、写真などの資料から、青山杉作であると思われる。
このレリーフ作品は、これまで開かれた回顧展に出品されたことがなかった。”新発見“の土方久功作品といえるものである。先日、戦後の「土方久功日記」を読んでいたら、1958年4月に次のような記述があるのが分かった(第75冊)。
 
8日 ●ゴタゴタシテイテ、ヤッタリ ヤラナカッタリダッタガ、2月ノ20日頃ニヤリダシタ桜ノト、ソレト仝ジモノデ欅ノト、ソレカラ、モオヒトツノ顔ト 出来アガリ、今日カラ、次ノ青山サンノデッサンニヨル 肖像トマデイカナイ欅板ノレリーフニトリカカル。幅1.1尺 縦1.35尺。

4月8日に着手した作品は、大きさが、幅1.1尺(33.3cm)、縦1.35尺(40.9cm)で、ギャラリー所蔵作品とほぼ一致する。また、「肖像トマデイカナイ」と書かれているが、確かに、新発見の作品は肖像らしくない。「青山サンノデッサンニヨル」とあるが、人物は構えた所のない、リラックスした自然な感じを与える。久功は俳優座でデッサンの指導をしていたので、その時に青山のデッサンを描いたものであろうか。

この半年後の9月23日の日記には、次のように書かれている(第76冊)。

23日 4月頃手ヲツケタ、昔ノ青山サンヲスケッチシタノニヨル、□(〔肖)□(像〕)欅板浮彫リノ肖像、イツカ出来アガッテイタモノ、色ツケ終ル。
   
ここから、このレリーフが9月に完成したことが分かる。肖像が若いのは、「昔ノ青山サンヲスケッチシタノニヨル」ためであろう。
(中略)
以上から、青山杉作の死後、1958年に久功はデッサンを基に、親しかった青山杉作のレリーフ作品を制作したことが分かる。そして、この作品は、ギャラリー南製作所の所蔵品とみてよいだろう。
 
---本文以上---

非常勤総務追記:本作品の箱(比較的新しいもの)には「男の肖像」と、作品裏には「肖像」と記された紙(比較的古いもの)が貼ってありました。高知県立美術館の図録P81に掲載のスケッチ「青山杉作像」と同じ図案であったことから、展示の際には「肖像(青山杉作像)」としたのでした。制作年は上記スケッチに合わせて1954年頃としたのですが、1958年に訂正しなければなりません。清水さん、ありがとうございます。